第20回 菌が育む命の歴史 [English below]

更新日:6月9日

[English below] 衣装デザイナーの鳥山美春さんからバトンをいただきました! 藍染の林広です。

藍染を始めて32年ほどになりますが、藍の葉を作って下さる農家さんの高齢化と後継者不足から、スクモ(藍染用の染料)にする藍の葉が、最近の天候不順も影響し減産が加速するばかりの現状です。


そんな最中「山で藍を育ててみないか」とのお声をいただき、3年前からつるぎ山系の貞光家賀 (Sadamitu Keka) 標高516mにある世界農業遺産の注目すべき特徴である「傾斜地農法」という「茅」を畑に敷き込み傾斜している土地を棚田にせず斜面そのままを畑として利用する農法から土が流れるのを防いだり、腐葉土となる茅を用いる、縄文、弥生から伝わる理にかなった資源循環型の傾斜地独特の農法に出逢いました。



傾斜地農法とは最大斜度40度にも及ぶ(私たちの畑で20度ですが)畑の上の段に「茅場」という茅を育てる場所があり、秋口にその茅を刈り取り樹などに立てかけ縛り付け春まで置きます。 内側の茅は醗酵し各種の菌が培養されますが、その菌の中には草を抑える菌、土壌に栄養となるバクテリアなどが住み着きます。この醗酵した茅を「コエグロ」と呼びます。 春になると、ポットや苗場に種を撒き、ちょうど今頃、畑に定植します。 この時に上部にある茅場から下方にコエグロを下ろします。逆だとコエグロを引き上げることになり労力も大変ですので理にかなった作業法です。 まず、人が歩く溝に水平になる様に長い茅を敷き歩く足元を確保します。

またこの茅は太陽光を遮断し草を抑制し、雨水を含み保水効果を高めます。

また畑の周りには落葉樹を植え、斜面に吹き付ける風から作物を守り土中の水分が蒸発するのを抑止し、秋になると葉が舞い落ち畑に入り、堆肥となります。 この自然循環型の農法は「立体農業」と呼ばれています。



定植はポットや苗床からの苗を畑に均等な間隔で5,6本を一株にして軽く掘った穴の中に植えます。 山では定植後の水やりは一切しないので理想は翌日が雨の日を選びますが、梅雨時期の畑の赤土は2センチも掘るとしっとりと湿った土で、この湿りが根から吸収される水分となります。 定植後、すぐに秋に集めた枯葉をビニール袋に50袋とか詰めて風雨にさらすと、雨が入った袋の中で適度に醗酵した培養土と同じものが出来上がっています。 この落ち葉を畝全体に覆いかぶせるように敷き詰め、土中の水分蒸発を防ぐと同時に、淡い緑の苗と、紅葉色が見事な配色となって畑に艶を与え定植の完了となります。

傾斜地農法がなぜ国連FAOから「世界農業遺産」に認定されたのか、理にかなった持続性のある自然農法も然ることながら、彩という自然の美しさも認定の基準なったと聞き、納得の認定だったと感じています。



実利から私は傾斜地で藍を栽培することを選択したのですが、

世界が日本の農業にいま注目している理由に、中央構造線の存在が在ります。 中央構造線沿いに破砕帯があり、そこに海の藻類が堆積した層が隆起したものが青石です。青石は風化すると良質の肥料となることと、青石のより鉄分を含んだ藻類の堆積物が赤土と呼ばれています。

鉄分を大量に含んだ「赤土」は地球上でも限られた場所にしか存在しないこと、また上昇気流が朝夕霧となって作物に水を供給する斜面があることも満たす地形は限られます。 特に四国は突出してこの条件を満たす数少ない地域でもあります。 もう一つ地形的な恩恵は、日本はジンギス・ハンに象徴される騎馬民族の侵略から免れたことです。日本以外で免れた土地はヨーロッパの一部と、アメリカ大陸と限定されます。

このように侵略が無かった日本には縄文、弥生という長期で独特の文化、伝統が破壊から免れた数少ない地球上の場所でした。

その縄文、弥生の文化継承には、社の中に森を有する「神社」。 またこの神社の近くには「菌の保存場所」としての「鎮守の森」にも縄文、弥生から農作物に有益な菌を脈々と受け継がれている場所が在ります。 歴史や文化が度々根絶やされた国々から日本が注目される理由の一つに鎮守の森の「菌」の存在が在ります。 数千年前から脈々と受け継がれている鎮守の森の菌は、藍を発酵させて藍の菌を閉じ込めた「スクモ」の中にも存在し、藍色はこの藍菌が作用していることが重要で、この藍菌に活性化する条件を維持することで、良質の藍色が得られるという藍の根本原理を理解するチャンスを葉の生産原料から学んだ「菌」の世界への開眼となりました。 あらゆる生物に菌が作用しています。 そして「菌」は陸地に人類が誕生する前、シダや苔の「菌」と同じ細胞から分裂し「人」が生まれたとするなら、地球上のあらゆる生物と人は対等な関係にある「兄弟」だと思うに至りました。



それでは、『あ(明)ける。』の舞台で"光の香り"を担当されたアロマセラピストの塚本洋子さんにバトンをお繋ぎさせていただきます。


Message of the Week

Hello, I'm Hiroshi Hayashi, a craftsman of indigo-dyeing. It's already 32 years since I started this "Japan Blue"-dyeing, but these days, the amount of indigo leaves, which are made into a dried and fermented dye substance called "sukumo", has been decreasing, partly due to aging of indigo leaves farmers and also to lack of successors.


So it was a turning point that we met on a "hillside farming" three years ago (cf. Mount Tsurugi Cordillera, Sadamitsu Keka in Tokushima Pref. 516 meters above sea level). It's a farming method where we make use of sloping land without building terraces. We can create fertile farm areas by placing mats made of reeds turning into humus soil: it's sustainable agriculture system based upon resource cycling.


On the upper part of slope, we have areas called Kayaba, where reeds grow. In autumn, they are cut and tied down and left until spring. Inside these binds, reeds are fermented and bacteria, which are functioning as biofertilizers, are cultured. When spring comes, we sow the seeds and plant out seedlings at this time of year! On the hillside, we place long reeds to level up the slope for farmers to safely walk around. These mats made of reeds effectively protect the fields from the direct sunlight, prevent weeds and also store rainwater. Around the field, we plant deciduous trees in order that fallen leaves cover the fields and are turned into compost. The combination of pale green of seedlings and red and yellow of autumn leaves make our fields breathtakingly beautiful. It's indeed convincing that "hillside farming" has been recognized as "Globally Important Agricultural Heritage System" by United Nations FAO (i.e., The Food and Agriculture Organization) because of its outstanding landscapes of aesthetic beauty combined with its agricultural biodiversity as well as its resilient and sustainable system.


The geographic characteristics as an island nation saved Japan from foreign invasion and conquest many times, which contributed to protect the traditions and cultures of Japan. Among such preserved culture is our Shinto shrines and next to these shrines, we have Sacred Forests called Chinju-no-mori, where various beneficial bacteria have been cultured. Our "sukumo" also contains such beneficial bacteria, which have also been cultured in Sacred Forests, and for indigo-dying, functioning of such indigo-reducing bacteria is very important.


In this way, my hillside farming experiences have opened my eyes to the wonderful world of bacteria. The fossil record indicates that the first living organisms were prokaryotes (i.e., Bacteria and Archaea), and eukaryotes arose a billion years later. Whenever I think of the history of life, from bacteria to animals, I feel as if human beings and all the living creatures on Earth are just like "brothers" and appreciate the strong bonds of such "brotherhood"!

-- Hiroshi Hayashi (7, June 2021)

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